私は、レバレッジETFであるSPXLを使って超長期の積み立てという、世間の人とは少し異なる資産運用を行っています。
長期でレバレッジETFに資産を預けるわけですが、そもそもそのレバレッジETFは長期に存在しているものなのか、本日は検証していきたいと思います。
レバレッジETFに投資している人、レバレッジETFへの投資を検討している人に参考になる記事だと思いますので、少し長い記事ですが、ぜひともご覧ください。
ETFの償還とは?
償還の意味
ETFや投資信託は、未来永劫に運用されるものではありません。
ETFや投資信託が運用をやめることを償還と言います。
償還には、予め定めた期間で運用を終える満期償還と、何らかの事情で運用が途中で終了する途中償還の、2パターンがあります。
途中償還は、ETFの人気がなく資金が集まらない場合などに起こります。
純資産額が少ないETFや投資信託に投資する場合は、それらが今後も長く運用されるものなのか、調べたほうが良いです。
ETFが償還されると保有者はどうなる?
ETFが償還されると、保有者には時価で保有額が払い戻されます。
ただ、満期償還の場合は償還日が決まっていますし、途中償還の場合でも償還がアナウンスされてから償還日までにはある程度の期間が設けられるので、保有者は償還前に売買するという選択肢もあります。
ですから、あるETFの途中償還が発表されると、保有者の売り注文が殺到する可能性が考えられます。
しかしインデックスに連動するETFの場合は、価格がETFの需要と供給ではなく、あくまでインデックスに連動するので、大きく価格が崩れるとは考えにくいです。
償還されそうなETFを保有するリスク
長期の資産運用をしようと考えている保有者からすると、保有するETFが償還されてしまうと、資産運用方針の変更を余儀なくされることになります。
ですから、そもそも近々に償還されそうなETFを保有することは、資産運用上、望ましいことではないでしょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
レバレッジETF償還のウワサ
ところで2020年、アメリカでレバレッジETFは全面的に規制されるのではないかというウワサがありました。
2020年1月20日のウォール・ストリート・ジャーナルの記事です。
Leveraged-ETF Seller Urges Investors to Fight Proposed Regulation
2020年、いくつかのETFが廃止、もしくは倍率が変更
2020年、多くのレバレッジETFが途中償還されてしまいました。
レバレッジETFの最大手Direxon社だけでも以下のものがあります。
名称 | ティッカー |
Direxion Daily Communication Services Index Bull 3X Shares | TAWK |
Direxion Daily Communication Services Index Bear 3X Shares | MUTE |
Direxion Daily Consumer Discretionary Bear 3X Shares | PASS |
Direxion Daily Consumer Staples Bull 3X Shares | NEED |
Direxion Daily MSCI Japan Bull 3X Shares | JPNL |
Direxion Daily Developed Markets Bull 3X Shares | DZK |
Direxion Zacks MLP High Income Index Shares | ZMLP |
Direxion All Cap Insider Sentiment Shares | KNOW |
Direxion Daily Russia Bear 3X Shares | RUSS |
Direxion Daily Natural Gas Related Bull 3X Shares | GASL |
Direxion Daily Natural Gas Related Bear 3X Shares | GASX |
Direxion Daily MSCI Developed Markets Bear 3X Share | DPK |
Direxion Daily Mid Cap Bear 3X Shares | MIDZ |
Direxion Daily Regional Banks Bear 3X Shares | WDRW |
Direxion Daily MSCI European Financials Bull 2X Shares | EUFL |
Direxion Daily Total Bond Market Bear 1X Shares | SAGG |
これらは純資産額が少なく、さらにコロナショックで資金が引き上げられ、運用会社(Direxon社)の運営上成り立たなくなったと思われます。
また、Direxon社運用のETFで、3倍レバレッジの商品が2倍レバレッジに変更されるということもありました。
ティッカー | 変更前 | 変更後 |
INDL | Daily MSCI India Bull 3X Shares | Daily MSCI India Bull 2X Shares |
LBJ | Daily Latin America Bull 3X Shares | Daily Latin America Bull 2X Shares |
UBOT | Daily Robotics, Artificial Intelligence & Automation Index Bull 3X Shares | Daily Robotics, Artificial Intelligence & Automation Index Bull 2X Shares |
BRZU | Direxion Daily MSCI Brazil Bull 3X Shares | Direxion Daily MSCI Brazil Bull 2X Shares |
RUSL | Direxion Daily Russia Bull 3X Shares | Direxion Daily Russia Bull 2X Shares |
NUGT | Direxion Daily Gold Miners Index Bull 3X Shares | Direxion Daily Gold Miners Index Bull 2X Shares |
DUST | Direxion Daily Gold Miners Index Bear 3X Shares | Direxion Daily Gold Miners Index Bear 2X Shares |
JNUG | Direxion Daily Junior Gold Miners Index Bull 3X Shares | Direxion Daily Junior Gold Miners Index Bull 2X Shares |
JDST | Direxion Daily Junior Gold Miners Index Bear 3X Shares | Direxion Daily Junior Gold Miners Index Bear 2X Shares |
ERX | Direxion Daily Energy Bull 3X Shares | Direxion Daily Energy Bull 2X Shares |
ERY | Direxion Daily Energy Bear 3X Shares | Direxion Daily Energy Bear 2X Shares |
GUSH | Direxion Daily S&P Oil & Gas Exp. & Prod. Bull 3X Shares | Direxion Daily S&P Oil & Gas Exp. & Prod. Bull 2X Shares |
DRIP | Direxion Daily S&P Oil & Gas Exp. & Prod. Bear 3X Shares | Direxion Daily S&P Oil & Gas Exp. & Prod. Bear 2X Shares |
ただし、いずれも純資産額が少ないETFが対象でした。原因はよく分かっていません。
ただ、このへんから雲行きが怪しい感じで、レバレッジETFはやがて規制されてしまい、やがてはSPXLをはじめとする大型レバレッジETFも規制や倍率変更(3倍から2倍レバレッジへ)に拡がるのではないかと巷では言われておりました(まあ、個人レベルのウェブ記事やツイッターレベルでしたが・・)。

SEC(米国証券取引委員会)のプレスリリース
ところで、2015年から、SEC(U.S. Securities and Exchange Commission、米国証券取引委員会)が、投資家保護の観点から、デリバティブ取引の規制を検討しているとの情報がありました。レバレッジETFは、先物取引によって成り立っているその仕組み上、デリバティブ取引の一つなのです。
そのため、そのうちレバレッジETFは規制され、一定の移行期間が設けられた後に償還されるのではないか、という憶測がありました。
ですが2020年10月に長い検討の末、ついに措置が決められました。
SECのプレス・リリース(2020/10/28) |
長い英文なので私なりに要約します。
SECは本日、上場投資信託(ETF)等を含む登録会社によるデリバティブ使用の規制の枠組みを強化することを決定しました。新しい規則は、投資家保護の懸念に対し、過去数十年にわたる進展を反映する、ファンドのデリバティブ使用の規制に対する近代化された包括的な措置です。SECは、ファンドのますます複雑化するポートフォリオの構成と運用に関連するリスクを考慮しながら、今日の資産運用業界で利用可能な、拡大し続ける製品の革新と投資家の選択を反映する規制プログラムの設計に取り組んでいます。
SECのジェイ・クレイトン会長は「デリバティブは、ポートフォリオ戦略とリスク管理において多くのファンドにとって重要な役割を果たすようになりましたが、デリバティブの使用に関する規制アプローチは一貫性がなく時代遅れです。(中略)重要なことに、新しい規則は、投資会社法によって課されるレバレッジ制限と矛盾するデリバティブの使用を禁止しますが、事実上すべてのファンドが最も効率的な手段を使用して投資家にサービスを提供し続けることを可能にします。」と述べています
(中略)
新しい規則は、投資家を保護するために設計された特定の条件に準拠している場合、ファンドが先物、スワップ及びオプション等のデリバティブ取引を行うことを許可します。特定の条件には、デリバティブリスク管理プログラムの採用等が含まれます。
(中略)
最後に、新しい規則は、レバレッジまたはインバースETFにも適用されます。
(以降略)
ということです。
つまり、レバレッジETFは一定の規則を守れば、今後も運用される、償還されないということです。
その声明から、SECの会長はデリバティブ取引に対してネガティブな印象でないことがうかがえます。
当面、SPXLのような大型のレバレッジETFが規制や強制的な倍率変更の対象になることはまずないでしょう。
情報を改めて整理して、ほっと胸をなでおろしました。
レバレッジETFは償還されない?
SPXLがSECの規制により途中償還されることはなさそうです。
ではSPXLが、途中償還されるリスクはないのでしょうか。
そんなことはありません。
途中償還のリスクは2つ考えられると思っています。
一つ目は、SECの方針です。
SECは、レバレッジETFに厳しい規制をかけない方針としていますが、今後この方針がどこまで続くのかは分かりません。当然、政治的に変わることも考えられることです。
二つ目は、運用会社の問題です。
また、レバレッジETFは、短期取引のつもりで保有する投資家が多く、暴落時に投げ売りされ純資産額が極端に減りやすいです。
純資産額が小さくなりすぎると、運用会社は収入源である信託報酬を失い、運用を続けられなくなります。
私の考え
ということで、レバレッジETF存続のためには、レバレッジETFを安定的に保有してくれるみなさまの存在が必要になります。
私は本ブログでSPXLの超長期投資を啓蒙していますが、この活動がSPXLの安定的な運営に寄与することを願います。
私は、SPXLは超長期投資に魅力的なETFだと考えており、実践しています。
当面は償還されないはずですし、純資産額最大のレバレッジETFであるSPXLの運営が立ちいかなくなることも考えづらい(株価が低くなることが問題ではなく、純資産額が小さくなりすぎることが問題です)ので、私は淡々とSPXLでレバレッジ投資を続けます。
まとめ
結論として、レバレッジETFに規制がかけられるというウワサがありましたが、問題ありません。
当面は、償還の心配はなく、SPXLの長期投資を続けられます。
コメントを残す